発達障害は、生まれつきみられる脳の発達の偏りにより、子どものころから行動や情緒に特徴を認める状態です。
発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などがあります。自閉スペクトラム症(ASD)は、他の人とコミュニケーションをとり関係をもつことが苦手です。また、行動、関心や動作のパターンが限定的で、多くの場合、決まった行為にしたがって毎日を過ごすという特徴があります。
一方、注意欠陥多動性障害(ADHD)では、注意を持続したり、集中したり、課題をやり遂げたりすることが苦手であったり、過剰に活動的で行動が衝動的というような特徴があります。以前は自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)は同時に診断することはない別の障害と考えられていましたが、最近は両者が並存することもあることが知られています。
発達障害は神経、脳機能の発達の偏りによる障害です。その偏りのために、注意力、記憶力、知覚、言語、問題解決能力、対人関係に支障をきたします。発達の偏りがなぜ起きるのかは十分に解明されていませんが、素因的な要因や、出生前のウイルス感染の関与を示唆した報告もあります。しかしながら、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)が子育ての失敗、養育環境によって起こるわけでないことは明らかになっています。
さらに、注意欠陥多動性障害(ADHD)については、中枢神経刺激薬など神経伝達系に作用する薬剤が治療に用いられることからも、神経伝達物質(脳内で神経信号を伝達する物質)を介した神経伝達機能の障害が関与している可能性が考えられています。
子どもの頃は気づくことなく経過し、大人になり環境や役割が変化することによって特性が顕在化し、適応障害やうつ病など精神障害を合併して精神科を受診する場合が良くあります。このような場合にはまず受診理由の障害の治療にあたります。その上で、背景にある発達障害に基づく自分の特性を理解し、個性として受け入れることによって、ご本人の力や自信を伸ばし、周囲の人ともよい関係性を築くことができるようになります。
また成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)については、複数の中枢神経刺激薬の有効性が確かめられています。
当院では、まずはしっかりと症状を確認し、必要に応じて心理検査などを行います。
発達障害の診断となれば、発達障害について丁寧に説明し、一人ひとりの状況にあわせた治療、支援のアドバイスを一緒に行っていきます。
発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習症(学習障害)など、いくつかのタイプに分類されます。これらの疾患に共通していることは、生まれつきみられる脳の発達の偏りによる障害ですが、早期の段階で、ご本人の困難さを、ご家族や周囲の支援者が理解し、それに適した療育(治療教育)を行うことで、ご本人の力や自信を伸ばし、周囲の人ともよい関係性を築くことができるようになります。
自閉スペクトラム症(ASD)とは、以前、小児自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などと呼ばれていた発達障害の総称です。生まれつきの脳機能の障害から生じる発達障害の代表的な疾患で、特性の強さや現れ方は一人ひとりで異なります。典型的な特徴としては、対人関係やコミュニケーションが苦手、言語発達の遅れということがあります。コミュニケーションの場面で、言葉や視線、表情、身振りなどを用いて相互的にやり取りをしたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手です。もう一つ重要な特性として、興味が狭い範囲に集中しやすく、周囲に関心を払うことが難しいということがあります。特定のことに強い関心を持っていたり、こだわりが強かったりということは、ASDの代表的な特徴の一つです。その他にも、感覚の過敏さ、運動の不器用さなど、様々な特性がみられることがあります。
一般的に、乳幼児期には精神発達・運動発達の遅れや感覚過敏などが主な特性としてみられ、早ければ乳幼児健診でその可能性を指摘されることもあります。児童期以降では学業や日々の生活、周囲との関係がより具体的な課題としてみえるようになります。
日本では、幼児期からの早期支援が活発に行われる地域が増えており、支援を受けたことで、自閉スペクトラム症の特性がありながらも、日常生活や社会生活を送っている方がたくさんいます。一方、自閉スペクトラム症は、発達特性から生じる問題のほかに、過剰なストレスや失敗体験が引き金となり、二次的な問題が生じることも少なくありません。二次的な問題としては、身体症状(頭痛、腹痛、食欲不振、チックなど)、精神症状(不安、うつ、緊張、興奮しやすさなど)、不登校やひきこもり、暴言・暴力、自傷行為などに発展する可能性があります。
お子さんの発達に気になる点がある場合には、できるだけ早めに専門の医療機関を受診することが大切になります。早期から、その子の特性に合った支援を開始することで、二次的な問題を防ぎながら発達を促すことが可能となります。
注意欠如・多動性障害(ADHD)は生まれつきの脳機能の特徴であり、不注意、多動性、衝動性の3つの主症状によって定義された発達障害のことです。
「不注意」の症状は、学校の勉強などでミスが多い、課題などに集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、最後までやりとげることができない、作業などの段取りや整理整頓が苦手、集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などがあります。
「多動性・衝動性」では、落ち着きがない、すぐに席を離れる、座っていても手足をもじもじする、おとなしく遊ぶことができない、しゃべりすぎる、順番を待つことができない、他人の会話やゲームに割り込む、などが認められます。
ADHDの基本的な治療目的は、これらの症状を完全になくすことではなく、特性と上手く付き合っていく工夫を見つけることや、特性に合わせて環境を調整することで、二次的な問題(抑うつ感や引きこもり、逸脱行動など)を防ぎ、生きづらさを緩和して本人の成長を促していくことになります。お子さんの発達に気になる点がある場合には、できるだけ早めに専門の医療機関を受診することが大切になります。心理・社会的療法を中心とし、必要に応じて中枢神経刺激薬などの薬物療法を併用しながら治療を進めていくことになります。
限局性学習症(LD)とは、全般的な知的発達には問題がないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」など特定の能力のみに困難が生じる発達障害のことです。人によって症状の現れ方が異なったり、意識しないと気づかれにくかったりと、診断が難しい障害でもあります。目安として、学校での学習到達度に、1~2学年相当の遅れがあるのが一般的です。
読字障害は、文字は読めますが、文章を読むのが極端に遅かったり、読み間違えたりすることがよくあります。書字障害は、文字を書く、文章を綴るといったことが難しくなります。算数障害は計算や推論することが難しいです。学習症の子どもに対しては、教育的な支援が重要になります。子どもにある困難さを正確に把握し、決して子どもの怠慢さのせいにせず、適切な支援の方法について情報を共有することが大切です。
最近は、発達が気になるお子さんへ早期療育を行うケースが増えてきています。早期から介入し、子どもに合った環境の中で学ぶことで、必要なスキルを身につけやすくなります。また、抑うつなど二次的な問題の予防にもつながるため、お子さんの発達に気になる点がある場合には、できるだけ早めに専門の医療機関を受診することが大切になります。
チックは、回数の多いまばたき、顔をしかめる(運動チック)、咳払いや舌打ち(音声チック)など、意図せずに起こってしまう素早い身体の動きや発声です。一時的に現れる子どもも多く、経過をみてよいものです。しかし中には様々な運動チックと音声チックが1年以上持続し、日常生活に支障をきたすほどになるトゥレット症という病気もあります。このトゥレット症では、飛び上がる、自分の体や足を叩く、しゃがむ、おなかに力をいれる、単語をいうなど、複雑な動きや発声を伴うこともあります。症状は10~15歳ころに顕著になりますが、成人になっても症状が継続する場合もあります。治療としては、チックが現れそうになったときに、チックと拮抗した動きをするハビットリバーサルがあります。日本ではトゥレット症に有効性が認められた薬はありませんが、統合失調症に用いる抗精神病薬などが有効であることが知られています。
吃音とはスムーズに話すことができない状態をいいます。同じ音を繰り返したり、音が伸びたり、なかなか話し出せないといった様々な症状があります。吃音は、厳しい子育てや本人の精神的な弱さの結果ではなく、体質的な要素が強いことが知られています。
吃音があることで、からかいやいじめの対象となっていないか、また、学校の発表などが本人の苦痛となっていないかなどを把握し、環境調整を行うことが大切です。吃音の治療には、言語聴覚療法や認知行動療法が行われます。
一般的に、知的能力の発達が水準に達していない状態をいいます。ここでいう知的能力とは、日常生活において物事を行う能力のことを指します。知的障害を引き起こす原因としては、脳の発達障害や脳の病気・損傷などが考えられています。小さなお子さんの場合、成長に個人差があるため、発達が遅れていても一概に知的障害とは言えないケースも多いのですが、気になる症状があれば、知能検査や発達検査などで医学的に判定することができます。
お子さんの発達に気になる点がある場合には、できるだけ早めに専門の医療機関を受診することが大切になります。
当院では、まずはしっかりと症状や生育歴などを確認し、必要に応じて心理検査を行います。発達障害の診断となれば、発達障害について丁寧に説明し、一人ひとりの状況にあわせた治療・療育、支援のアドバイスを一緒に行っていきます。
TOP