「双極性感情障害」はかつて「躁(そう)うつ病」といわれていました。うつ病と混同されがちですが、まったく異なる病気で治療法も異なります。
双極性感情障害は、躁状態(気分の高揚・活動性の増加・睡眠要求の低下)と抑うつ状態(抑うつ気分・気分の低下・活動性の低下)のエピソードが反復するもので、軽躁で数日間、躁状態で1週間以上、うつ状態は2週間以上続きます。日本における双極性障害の患者さんの頻度は、重症・軽症の双極性障害をあわせても0.4~0.7%といわれています。
躁状態ではとても気分がよいので、「これが本当の自分」と主張するなど、本人には病気の自覚がありません。そのため、うつ状態では医療機関の受診につながりますが、躁状態では医療機関を受診しないことがよくあり、さらに症状を悪化させてしまうことがあります。また、うつ状態の治療だけでは、かえって双極性感情障害を悪化させてしまうことがあります。そのため、本人だけでなく、ご家族を含めた周囲の方に、気分の波など日頃の様子を確認して、躁状態に気づくことが大切になります。
双極性感情障害(躁うつ病)の治療では、主に薬物療法や心理社会的治療を並行して行っています。薬物療法では、気分安定薬(炭酸リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンなど)や激しい躁状態には鎮静効果のある非定型抗精神病薬を併用していきます。特に炭酸リチウムやバルプロ酸を服用する場合は、副作用が出ないように血中濃度を定期的に測定しながら投与量を決めるなどといった細やかな調整が必要になります。
また、双極性感情障害のうつ状態に対して使う薬は抗精神病薬となり、うつ病の時に使用する抗うつ薬とは違います。うつ病に効く薬であっても、双極性感情障害のうつ状態に効果を認めず、躁転する可能性もあります。治療してもなかなか治らないうつ病が実は双極性感情障害だった、ということもしばしばありますので注意が必要となります。
当院では、まずしっかりと症状やきっかけとなった出来事をうかがいます。双極性感情障害の診断となれば、双極性感情障害の症状をていねいに説明し、一人ひとりの状況にあわせた治療を一緒に行っていきます。
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